今回は安全資産であるゴールドについて知っておくべき知識をまとめて解説します。
金について基礎的な知識を入れておくだけで、金を投資対象として考えることができるようになったり、金の買い時が分かるようになったりと非常に大きいメリットがあるので是非この機会に押さえてもらえればと思います。
金(ゴールド)とは何か?
金(ゴールド)とは、貴金属の一種で投資の世界では、『安全資産』とも呼ばれる金融商品のことです。
掘り出す以外に入手する方法がなく、作ったり増やしたりすることができないため、金は『世界中』でその希少価値が認められています。
今まで人類が採掘した金は20万トンで、プール4杯分の量もないので、その希少性は疑いようがありません。
また、実際に貨幣の代わりに利用されていた歴史を持ち(金本位制)、現物としての価値があると言えます。
金は価値のある世界共通の通貨みたいなものなんですね。
ここからさらに金についての基礎的な理解を深めるために、採掘量、埋蔵量、消費量、使用用途を簡単に確認していきます。
金の採掘量

金は世界中で毎年3千トン前後採掘されています。
上の表は2018年の金の採掘量の多い国上位9カ国ですが、中国、オーストラリア、ロシア、アメリカといった国だけで採掘量の6割を占めていることになります。
ちなみに金のイメージが強い南アフリカは2005年には金の採掘量トップでしたが、その採掘量は年々減少しており、意外なことに9位という結果になっています。
金の埋蔵量

世界全体の金の埋蔵量は約5万4千トンと言われており、毎年3千トン前後採掘されているので、このペースが続けばあと17年くらいで全て採掘されてしまう計算になります。
そのため、金を投資対象として見る際には17年後の金の価値に注目する必要性があります。
上の表は金の埋蔵量が多いとされる上位5カ国とその埋蔵量をまとめたものですが、こちらも上位5カ国だけで全体の5割を占めており、埋蔵量に偏りがあるのが分かります。
ちなみに採掘量1位の中国の金の埋蔵量は9位となっており、中国の採掘量の多さが埋蔵量によるものではなく、非常に早い採掘ペースによるものであることが分かります。
金の消費量
金の1年間の消費量は3000トン近くであると言われています。
この数値は先ほどお伝えした金の1年間の採掘量と同じくらいであり、金の需要がかなりあるということが分かります。
国別で消費量を見てみると、中国とインドだけを合わせて50%以上を占めており、この2カ国が金を大量に消費していることが分かります。
このように需要がどこかの国に集中しているのは非常に危険で、例えば今後中国やインドの金の需要が大きく減ってしまえば金の需要が供給を大きく上回って金の価値が大暴落する可能性も考えられます。
金の使用用途
投資に対する割合が増えている

上の表は金の使用用途とその割合を簡単にまとめたものです。
宝飾品要が50%を占めてはいますが、投資目的の金の需要も近年で確実に増加してきており、今後さらに投資目的の金の需要が大きくなってくると考えられます。
ちなみに『公的購入』というのは『外貨準備』のことです。
金は世界中でその希少価値が認められているので、各国の中央銀行の外貨準備として保有されるんですね。また、外貨準備に金を保有するのは米国や欧州の国々が大半です。
外貨準備は国規模での需要があるので、今後の外貨準備への金の需要がどうなるかも注目する必要があります。
外貨準備とは為替変動に対する国の準備金のことで、為替が急激に変動した場合に、外貨準備を使って国際取引が円滑に進むように対策をします。
金はどのように値動きするか

一般的に金は金融ショックで価格が上がります。
というのも、金融ショックが起こると、株価の下落や、金利の引き下げ、金融緩和によるインフレへの懸念から株や預金に充てられていた資金及び現金が大量に『金』に流入して金の需要が増加するからです。
これを『有事の金買い』などといいますね。
つまり、どの金以外の金融商品に魅力がないということで、消去法で資金を金に逃した結果金の価格が上昇するという仕組みなんですね。
ただし、コロナショックでは、金融ショックであったにも関わらず金の価格が下落しています。
これは、金を持っていた投資家が資金調達のために仕方なく金を売って現金に替えていたことが原因ですが、このように他の理由が絡んで需給のバランスが逆転すると、一般論が通用しなくなることもあるので注意が必要です。
金のリスク
続いて金に投資をするにあたってのリスクについて触れていきます。リスクを知らないと、対応を間違えてしまう可能性があるので、リスクを理解して適切な対処を取れるようにしましょう。
盗難リスク

当たり前ですが、金塊を無防備に家においてしまうと盗まれる可能性があります。
そのため、ちょっとの金であれば、うまく収納して家庭で保管することも可能だと思いますが、場合によっては金を金庫や銀行の貸金庫に預けて盗難のリスクを回避する必要があります。
ただし、銀行に預けると保管料がかかるデメリットもあるので、リスクと保管料のどちらを優先すべきかを考えて対応をとるといいと思います。
保管料は金のサイズにもよりますが、大体月1000円から3000円と結構高いです。この保管量を避ける方法としては、「家で保管する」、「投資信託・ETFを購入する」の2つがあります。
価格変動リスク

金は、先ほども軽くお伝えしたように『リスクオフ』、つまり金融ショックなどでリスクを回避したい場合には価格が上昇しますが、
『リスクオン』、つまり好景気などのリスクをとってでも利益を取りに行く流れの時は価格が下落してしまいます。
そのため、金を保有すると、価格変動によって金の価値が大きく目減りしてしまうリスクを伴ってしまいます。
また、上のチャートを見ると分かるように値動きが激しいのもかなりネックな部分ではあります。
金の価値が大きく下がりそうな局面では早めに売って、あとで買い戻しを行うといった対処をすると価格変動のリスクを避けることができるので金の需要がどう動いているか注目しておく必要があります。
為替リスク
日本では金が取れないので金の入手は輸入に頼っている状況です。
そのため、金を購入するにあたって調達コストに為替が影響してきます。
一般に円高ドル安であれば、輸入コストはあまり掛からないので金の価格は下がり、
円安ドル高であれば、輸入コストが余計に多くかかるので金の価格は上がってしまいます。
為替リスクに関しても可能であれば、目減りしてしまわないように対処するといいと思います。
ただし、初心者のうちは難しいかもしれないので、まずは保有を続けながら価値がどのように変動するかに意識をしてみるといいと思います。
ドル安円高のタイミングで金価格が上昇した場合には、ドル建てでは資産が増えても円建てに直すと減ってしまうので金価格が上がったら基本的にドル建てのままで持っておくのがベストです。
金利上昇リスク
一般的に金利が上がると資金は銀行預金などに流れるので金の価格は下がり、金利が下がると資金は金に流れるので金の価格は上がります。
そのため、金を保有する際には金利がどう動くかということについても注目しておく必要があります。
金は色々なことが価格変動に影響してくるので、様々なことに目を向けておく必要があるんですね。
金の買い方
普通に考えて『金を買う』ということはあまりないと思いますので金の買い方についても簡単に触れておきたいと思います。
現物(地金・金貨)

金の一番分かりやすい買い方が現物での購入です。
地金(じがね)
金の延棒のような地金は貴金属店から好きな重さだけ購入することができます。
金貨
金貨も現物の1種ですが、金貨はアマゾンなどのネット通販で購入することができます。
金貨として有名なものとしては『ウィーン金貨ハーモニー』や『メープルリーフ金貨』がありますが、どちらも紋様が違うだけで、純度は99.99%で一緒です。
ちなみにサイズは1オンス、1/2オンス、 1/4オンス1/10オンスの4つから選択することが可能です。
オンスというのは重さを測る単位のことで、1オンス約28グラムです。
アマゾンで確認をしたところ、2020年12月1日時点で以下の価格になっていたので、参考にしてみてください。
- メープルリーフ金貨 1/10オンスで48999円
- ウィーン金貨ハーモニー 1/10オンスで56000円
純金積み立て
2つ目の金の購入方法が『純金積立』です。
これは積立で純金を購入するという方法で、少額から定期的に積立が可能で現物との交換も可能な場合があります。
また、積み立てでなくても、一気にまとめて購入できる『スポット購入』も可能です。
積み立てで購入が可能なのは非常に魅力的ではありますが、証券会社を通して購入するので手数料がかかってしまうというデメリットがあります。

上の表は各会社と金を購入する際の手数料をまとめたものですが、結構な手数料を取られるのがわかると思います。
住信SBIネット銀行の手数料は、保管料などの手数料も込みで1000円につき25円と一見お得に見えますが、毎月手数料が取られてしまうので、注意が必要です。例えば、今月1000円分の金を購入し、来月も1000円分の金を購入した場合、購入した金は2000円分なので毎月50円の手数料を取られることになります。
投資信託・ETF
金をメインに投資をしている投資信託やETFを購入することでも、間接的に金を購入することができます。
ただし、この場合にもドル建てとなり、為替変動リスクを受けることになります。
ちなみに『ドル建て』とは、円をドルに替えてから投資信託やETFを購入することです。
ただし、投資信託やETFで間接的に金を購入する場合には、金を保有する際に必要な保管料や金庫が必要ないので、割と気軽に投資ができるのがメリットです。
ただし、投資信託やETFの場合は、信託報酬が発生するので、運用コストが最終的にどちらが安くなるかを考えて判断する必要があります。
銀行に保管料を払う場合には、余程の額の金を購入しない限りETFの方が安くつきます。
投資信託とETFはどちらがいい?
投資信託よりもETFの方が運用コストを抑えることができるのでETFでの購入をおすすめします。
具体的なETFとしては『GLD』、『IAU』などがいいかと思います。
IAUに関してはは5000円から購入が可能となっていて比較的少額から金に投資ができるので初心者の方にも優しいのではないかと思います。
ただし、ETFの場合は投資信託と違って自動買付サービスがないので積立投資をする際には買い忘れに注意が必要です。
まとめ:金について理解して今後の値動きに注目しよう!
金についての理解が深まったのではないでしょうか?
個人投資家の多くは金についての知識を身につけないで持ち株の株価ばかりを追いかけてしまいがちですが、金の値動きをみて相場全体の流れを掴むことの方が長期的には大切になってくると思いますので、是非この機会に金の値動きをみれるETFなどをウォッチリストに加えておくことをおすすめします。
記事を通して少しでもお役に立てたら幸いです。