今回は江戸時代から伝わるチャート分析法『酒田五法』について図を使って解説します。チャートを見る上で欠かせない知識となっているのでこの機会に是非押さえてみてください。
酒田五法とは何か?
酒田五法とは江戸時代に本間宗久の残した遺訓であり、ローソク足によるテクニカル分析や考え方として用いられています。
三山、三川、三法、三兵、三空の5つが五法と呼ばれており、そのうち三川、三山、三空、三兵はテクニカル分析であり、三兵は相場に対する心構えです。
江戸時代と聞くと、現在では通用しないのではないかと考えてしまいがちですが、実際に現在でも通用するチャート分析であり、普遍的な考え方を多分に含んでいます。
また海外でも人気のあるチャート分析で、その人気ぶりは五法の英語表現が定着するほどです。
例えばトリプルボトム、ヘッドアンドショルダーなどといった言葉は酒田五法から生まれた表現です。聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
他にも英語表現で聞いたことがあるものがいくつかあるかもしれません。漢字だとしっくりこないという方は英語表現も併せて記載しているのでそちらを覚えてみてください。
三山/さんざん

まずは三山です。三山とは3つの山が同じ高さで出現する形のことで、売りのサインとして用いられます。
英語ではトリプルトップといいます。
三山がなぜ売りのサインとして用いられるかですが、この3つの山が何を意味しているかを理解する必要があります。
この山は抵抗線を突破できなかったために山になってしまっていると考えられます。そして抵抗線に何度も跳ね返されると、これ以上は利益が伸びないという考えに基づく利益確定の売りや、そろそろトレンドが変化するだろうという思惑からの空売りなどが重なって強い売りを形成します。
更に、直近の安値つまり、支持線を割った段階で損切りによる売りも発生して更に強い売りとなって上昇トレンドから下降トレンドに転換します。
三尊/さんぞん

三尊とは三山のうち特に中央だけ山が高い形のことで、三山よりもより強い売りのサインとして用いられます。
英語ではヘッドアンドショルダーズトップと言います。ヘッドアンドショルダーと簡単に読んでみるのもいいかもしれません。
三尊では左右対象が非常に重要であると考えられており、右の山と左の山の高さが中央から見たときに左右対象であればあるほど信憑性が高い三尊であるといえます。
三尊が三山よりも強い売りサインとして用いられる理由ですが、三尊の形を分解してみるとよく分かります。
三尊を真ん中で二つに分けてみると、上昇と下降の要素に綺麗に分かれますよね。つまり、三尊は上昇トレンドから下降トレンドへの転換を意味している形と言うことです。ですから売りのサインとして機能するわけです。
三川/さんせん

三川とは3つの谷が同じ深さで出現する形のことで、買いのサインとして用いられます。
英語ではトリプルボトムと呼ばれます。
三山の逆のようなパターンで、支持線を割ろうとして谷が形成されます。しかし、売りは無限に出るわけではないので、次第に売りが枯れて買いが優勢になり、上昇トレンドへと転換します。
逆三尊/ぎゃくさんぞん

逆三尊とは三川のうち、特に中央だけ谷が深い形のことで、三川よりも強い買いのサインとして用いられます。
英語ではヘッドアンドショルダーズボトムと言います。よくヘッドアンドショルダーの逆という意味で逆ヘッドアンドショルダーとも言われます。
逆三尊も三尊の逆のパターンで基本的な考え方は同じです。三尊は上昇トレンドから下降トレンドへの転換を意味していましたが、逆三尊は下降トレンドから上昇トレンドへの転換を意味します。
三法/さんぽう
三法とは始めにお伝えしたように相場の心構えのことで、『休むも相場』というものです。そしてこの心構えから上げ三法と下げ三法というテクニカル分析も生まれました。三法の英語は詳しくは分かりませんが、上げ三法は押し目、下げ三法は戻り目と言われることが多いのでそちらを参考にしてみてください。
上げ三法

上げ三法とは大陽線をつけた後、3つ以上連続して陰線をつけて、その後また大陽線をつける形のことです。
2本目の大陽線が1回目の大陽線の終値を上抜けてきた場合、上げ三法という形で買いのサインとして機能します。逆に上抜けて来なかった場合は買いのサインとして機能しない場合が多いので注意が必要です。
下げ三法

下げ三法とは大陰線をつけた後、3つ以上連続して陰線をつけて、その後また大陰線をつける形のことです。上げ三法の逆のパターンですね。
2本目の大陰線が1回目の大陰線の終値を下抜けてきた場合、下げ三法という形で売りのサインとして機能します。逆に下抜けて来なかった場合売りのサインとして機能しない場合が多いので上げ三法と同じで注意が必要です。
また下げ三法の陽線を見て、トレンドの転換を期待して買いに入る初心者が多いですが、この陽線は買い圧力が多少働いているだけであってそこを突破すると更に下降していくので安易に買ってはいけません。
三兵/さんぺい

三兵とは陽線か陰線が3本連続並行して階段上になっている形のことです。
3本連続で陽線をつけると赤三兵といって買いのサインになります。
逆に3本連続で陰線をつけると黒三兵といって売りのサインになります。
英語では赤三兵のことをスリー・ホワイト・ソルジャーズ、黒三兵のことをスリー・ブラック・ソルジャーズと呼びます。

注意点として、赤三兵の場合は上ひげがないこと、黒三兵の場合は下ひげがないことが重要です。上ひげ下ひげがあるということは上ひげ下ひげがない場合に比べて買いや売りの勢いが弱いと考えられるため、上ひげ、下ひげがあった場合は買いや売りのサインとして機能しない場合が多いので注意が必要です。
三空/さんくう
三空とは陰線または陽線が連続している時に、3連続で窓ができる形のことです。買われ過ぎ、売られ過ぎを意味して、買いや売りのサインとして機能します。
窓が4連続できると四空、5連続だと五空という風に呼び方が変わります。
また、陽線の間に窓がある場合を踏み上げ、陰線の間に窓がある場合を叩き込みと言います。
踏み上げ

陽線と陽線の間に3回連続で窓ができた形のことです。これが現れると買いの勢いが非常に強いことを示し、買われすぎということで、売りのサインとして機能します。
かなり強い相場では四空、五空、六空も平気で起こることがあるので臨機応変に対応することが大切です。また、こういったボラの大きい相場では少しのミスで痛手を負ってしまうことがあるのでしっかりとリスク回避と対策を練った上でポジションを持つようにしましょう・
叩き込み

陰線と陰線の間に3回連続で窓ができた形のことです。これが現れると売りの勢いが非常に強いことを示し、売られすぎということで買いのサインとして機能します。
こちらも同様に四空、五空、六空が平気に起こります。様々な状況を想定した上でポジションを持つことが大切です。
まとめ:酒田五法を理解してチャート分析をしよう!
- 酒田五法とはチャート分析の一種
- 三山、三川、三法、三兵、三空の五法からなる
- 現代でも通用する
酒田五法について理解が深まったのではないでしょうか?人によってはチャート分析をしないという方もいるかもしれませんが、短期的には需給で動くのが株価ですのでファンダメンタルズ分析に加えてテクニカル分析をしてみるのも面白いと思います。
記事を通して少しでもお役に立てたら嬉しいです。