今回は企業の財務状況を簡単に確認するのに役立つ自己資本比率・流動比率について解説します。
自己資本比率とは何か?
自己資本比率とは返済不要の自己資本が会社全体の資金調達の何%なのかを指す数値のことです。
例えば、あなたが現在自分で稼いだお金を50万円、銀行から借りたお金を50万円持っていたとすると、自己資本比率は50%ということになります。
自己資本とは
自己資本とは投資家から株の発で調達した資本金と、会社の貯金ともいえる内部留保を足したもののことで、返済義務がないお金のことです。
要するに会社自身のお金のことです。
他人資本とは
また、自己資本の対になる言葉として他人資本という言葉があります。他人資本と言うのは銀行などの金融機関から借りてきたお金や、社債の発行で得たお金などのことを指し、自己資本とは違い返済義務があるのが特徴です。
自己資本が小さくなるということは、他人資本が大きくなるということですから、仮に自己資本が小さくなっていけば、債務超過と呼ばれる負債の総額が資金の総額を超える状態となり、倒産の危機に陥ります。
そのため、自己資本は多くの投資家などによって企業の倒産のリスクなどを分析するために用いられています。
自己資本比率の計算方法
自己資本比率=自己資本÷総資本×100
という計算式で求めることができます。
総資本とは簡単にいうと自己資本と他人資本を足したもののことです。
そのため、自己資本比率が大きければ、自己資本の割合が高い、一方でこの数値が低いと他人資本の割合が高いということになります。
自己資本比率の目安
自己資本比率の目安としては理想が70%、倒産しにくいのが40%、すぐには倒産しないのが20%と言われています。
ただし、あくまで目安であって、自己資本比率は業種、例えば製造業やサービス業などで異なるということに注意してください。

上の画像は経済産業省の調べによる製造企業における自己資本比率です。同じ業種であっても自己資本比率の平均が少しずつ異なることがわかると思います。
そのため、自己資本比率を見る際は先ほどお伝えした目安を基準にするのではなく、業種平均を調べて目安にする方がより正確で安全です。
自己資本比率が高いほど会社の経営が安定しているので倒産しにくい優良な会社であると言えます。
流動比率とは何か?
流動比率とは企業が保有している『すぐに』お金に換えられる資産が、企業の抱えている1年以内に支払うべき負債の何%にあたるかを示したもののことです。
つまり、1年以内に返済する必要のある借金の何割を支払う余力があるかということです。
例えば流動比率200%であれば、借金の約2倍分お金に換えられる資産を保有しているということになります。
そのため、流動比率は会社の借金に対する支払い能力を見るために用いられることが多いです。
一般に企業は経営状態が傾くと支払うお金がなくなって資金繰りが難しくなりますが、流動比率を見ることでそういった経営状態が悪化した場合に企業がどれだけ踏ん張る力があるかを測ることができるんですね。
自己資本比率と流動比率の違い
ここまで自己資本比率と流動比率について解説しましたが、自己資本比率と流動比率の違いがあまりはっきりしないという方もいるのではないかと思います。
ずばり自己資本比率と流動比率の違いは、その『規模感』の違いにあります。
というのも自己資本比率は、企業の財務状況を簡単に知る分には十分に役立ちますが、『1年以内に支払うべき負債を支払う能力があるか?』といった正確な情報を得ることはできません。
一方で流動比率は1年以内の会社の支払い能力に焦点を絞っているので、会社が1年以内に支払うべき負債を支払えるかが分かります。
ただし、規模感が小さくなってしまったが故に、自己資本比率のようにざっくりとした会社の財務状態は掴むことができないんですね。
財務をざっくりと知りたければ自己資本比率、1年以内に絞って知りたければ流動比率を見てうまく使い分けましょう。
流動比率の計算方法
流動比率=流動資産÷流動負債×100で計算することができます。
流動資産とは企業が一年以内に現金化出来る資産のことで、流動負債とは企業が一年以内に返済しなければならない負債のことです。
この流動資産が流動負債に対してどれくらいあるかを比率にしたものが流動比率なんですね。
流動比率の目安
流動比率は200%以上が安全、100%以下が危険といわれています。
日本の上場企業の流動比率の平均は約120%で実際は流動比率200%を超える企業は珍しいです。
ですから、200%というのはあくまで目安にして、流動比率が200%以下の企業であっても投資の対象としてみる方がいいと思います。
ただし、流動比率が100%以下の企業に関しては流動負債の方が流動資産より多い、つまり借金の方が多いという状態でとても危険なので投資の対象から除外することをおすすめします。
流動比率を見る際の注意点
流動比率が100%を超えているかどうかは企業の倒産リスクの目安にはなりますが、100%を超えていれば絶対に倒産しないということではありません。
過去には流動比率が100%を超えていても倒産した企業も存在します。
これはなぜかというと、流動比率を求める際に使用した流動資産の中には棚卸資産、つまり商品も含まれているからです。
流動資産は1年以内に現金化出来る資産のことでしたが、その中に売れるかどうかも怪しい商品が含まれている可能性があるんです。
例えばガリガリ君のナポリタン味が1年以内に現金化出来る資産として計上されているわけです。
こういった商品は売れなければ破格の価格で売り切ってしまうか、最悪廃棄というケースで処分するしかないので実際には1年以内に現金化出来る資産とは言えない場合が多いんですね。(失礼!)
先ほどお伝えした流動比率が100%を超えていても倒産した企業というのは、こういった売れない商品を流動資産の中に多分に含んでいたため倒産リスクが誤って表されたという典型的な例です。
自己資本比率や流動比率より正確な指標はある?
流動比率が簡単な倒産リスクを見る指標となることは理解できたのではないでしょうか?
そして流動比率には欠点があるということも同時に理解いただけたと思います。
流動比率よりももっと正確に倒産リスクを測ることができる指標はないの?と思われた方多いと思いますが、企業の財務状態を測る指標は自己資本比率に始まり手元流動性比率にかけてより正確で具体的になっていきます。
自己資本比率→流動性比率→当座比率→手元流動性比率
そのため、流動比率より正確で具体的な倒産リスクを知りたいのであれば当座比率と手元流動性比率を参考にしてみるといいと思います。
まとめ:自己資本比率・流動比率を見て倒産リスクを計ろう!
- 自己資本とは返済義務のない資本のこと
- 自己資本比率とは自己資本が全体の何%なのかを示す値
- 自己資本比率が高いほど経営が安定する
- 業種別によって目安になる自己資本比率が異なる
- 流動比率とは会社の支払い能力を見るために用いられる指標のこと
- 流動比率が200%以上が安全、100%以下が危険
- 流動比率の中には売れない商品も含まれている
自己資本比率と流動比率について理解が深まったのではないかと思います。
最初のうちは直感で投資をしてしまいがちですが、自己資本比率などの指数を用いることでよりリスクの低い投資をすることが可能になります。
企業の自己資本比率や流動比率を確認する一手間を加えて賢い投資をしていただければと思います。
記事を通して少しでもお役に立てれば嬉しいです。